ゲイのがん治療② ~病院での実例~
がん患者/Nさんの話『ゲイのがん治療』の全3話の第2話。
今回はゲイならでは、病院での実例です。
ちなみに前回はゲイ/ストレート関係ない『がんの実情』↓
https://lgbts-lifeplan.hatenablog.com/entry/2020/04/21/103119
Nさん:38歳ゲイ、S県在住、末期がん(原発巣:大腸)。
35歳で会社の健康診断で発見、再検査でがんと告知。
同性パートナーはTさん(27歳)。
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〜1つ目の病院:がんセンター〜
Nさんはゲイだということを隠し、1人暮らしの設定。
同棲しているTさんを『近所に住む会社の後輩』と
病院では言っていた。
その結果、手術後ICUの面会もできない。
手術同意書などの重要書類も、Tさんが触れることはなかった。
代わりに手術に立ち会ったのはNさん実父。
大学の時にカミングアウトに失敗、その後両親とは絶縁状態。
Nさんはがんを機に、親との距離を縮めようと連絡したのだ。
しかし父親は書類関係を済ませ、
麻酔から目が覚めるともう帰った後。。。
「そんな父でも、Nさんの近くに行けるのに」
Tさんは本当は毎日、せめて洗濯物の交換だけでも訪れたい。
けれど『近所に住む会社の後輩』には不自然。
10日間の入院中、3回しかお見舞いに行けなかった。
Tさんのやるせなさ、胸が痛いです。
〜2つ目の病院:大学病院〜
今度は最初から主治医や看護師に『ゲイであること』、
『Tさんが同性パートナーであること』を伝えたそうだ。
余命1年を宣告される頃には、抗がん剤の度に3〜5日間の入院。
(通常、抗がん剤は通院です)
主治医は「女性病棟のほうが良いのかな」など
変な気遣い(?)もあり、最初から不安だったそうだ。
Tさんとの関係は、病室内でも有名。
差別的な表現、誤解も多かった。
しかしTさんは毎日、お見舞いに来れるようになり、
事務書類を渡されることも増えた。
病院がきっかけなのか、どうなのか、
『Nさんがゲイ』だと会社にバレた。
がんになると、3人に1人は会社を辞める。
急な早退・欠勤は頻繁、有給も使い果たせば、
真面目な日本人なら、わからなくもない。
「もう会社に行けない。どうせ余命1年だし」
Tさんの反対をよそに、Nさんは辞職した。
がんになると、これも3人に1人は『うつ』になるデータもある。
病気と戦い、お金と戦い、気持ちとも戦う。
ゲイは、更にこれに『性差別との戦い』が加わる。
〜3つ目の病院:市内の中堅病院〜
紹介状(カルテ)にゲイだと書いてあったらしい。
しかしこの病院は、拍子抜けするほど差別がなく、
Nさん、Tさんに対してちゃんと『普通』に接してくれた。
LGBTならわかりますよね、これがどれだけありがたいか。
私はカミングアウトを勧めてる訳ではないです。
Nさん・Tさんは、オープンOKなごく一握りのラッキーな人。
ほとんどのLGBTは病気と戦い、お金と戦い、メンタルと戦い、
普通なら鬱になる状態でも、自分の根源を隠し続けます。
Nさんは今、免疫療法で劇的に回復。
全身に転移したがんは、残すは数箇所のみ。
余命宣告を言われることもなくなった。
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ゲイであることで、病院での実例が今回。
次回、3部作の最後はLGBTカップルが必ず直面する課題、
お金の問題について。
https://lgbts-lifeplan.hatenablog.com/entry/2020/04/23/234335